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労務管理の基礎知識(回答)

ここでは、さまざまな労務管理上の具体的な事例を分かりやすく説明しています。実際の実務に役立つよう説明をしていますので、参考にしていただけたらと思います。

労務管理の基礎は労働社会保険諸法令

労働社会保険諸法令は強行法規である場合が多く、これらの法律に違反すると罰せられる場合もあります。

労働社会保険諸法令とは、労働基準法・最低賃金法などの労働者保護法、労働者災害補償保険法・雇用保険法などの労働関係諸法令、厚生年金保険法・健康保険法などの社会保険関係諸法令の一般的な総称で、会社と社員の関係を規定する労務管理の基礎となるものです。

特に、労働基準法は労働者保護の中心となっている法律で、労働者が人間に値する生活を営める労働条件の実現をはかることを目的とし、労働条件(労働時間・賃金・休暇など)に関する最低限の基準を定めた法律で、経営者や管理職にとっては労務管理を行うために必ず必要となる知識です。

これらの労働社会保諸法令の多くは強行法規で、強行法規とは当事者の意思にかかわらず、法として画一的 に適用される規定のことで、会社と従業員との合意で労働社会保諸法令に違反している雇用契約をを結んだとしても、この雇用契約のうち労働社会保諸法令に違反している部分は無効で、労働・社会保険関係諸法令の内容が強制的に適用されるということです。

たとえば、会社と従業員の間で「有給休暇は与えない」という契約を結んだとしても、有給休暇は労働基準法で定めれれている規定なので、この契約は無効で従業員が有給休暇を請求したら会社はこれを拒否することができないということです。
(参考:>> 労働基準法に違反している雇用契約はどうなるの?)

これらの労働社会保険諸法令を守らないと是正報告書の提出・会社と従業員とのトラブルの発生・ブラック企業などと社会的批判を受ける場合があるほか、罰金刑や懲役刑に処せられることもあります。会社は労働社会保険諸法令を遵守し、適切な労務管理を行うことが必要になります。

正社員・パート・アルバイト・嘱託社員の違いは何?

労働基準法では正社員もパート社員も同じ労働者。有給休暇・残業代も必要。

多くの会社では、従業員を正社員・パート社員(働く時間が短く、時給で賃金が支払われる社員)・アルバイト(夏休みだけのように雇用期間が短い社員)・嘱託社員(定年退職後、再雇用した社員)などのように区分していますが、これは、労働時間・賃金制度や人事制度が正社員と違う社員の労務管理をしやすいために会社が独自の名称で区別しているもので、労働基準法にはこのようなパート社員・アルバイトなどの区別はなく、労働基準法第9条で次のように労働者の定義がされているます。

第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」と
いう。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

つまり、労働者とは、
① 会社に雇われていること。
② 会社の指揮命令を受けて働いていること。
③ 賃金(労働の対償として労働者に支払うもの)を支払われていること。

の3つの要件を満たしている者のことで、

パート社員・アルバイト・嘱託社員のような名称にとらわれず、3つの要件を満たしている者はすべて「労働者」となり、労働基準法の適用を受けるため、(労働基準法には「労働者」という言葉しかなく、「正社員」・「パート社員」・「アルバイト」などの言葉はありません。)労働基準法に規定されている有給休暇や割増賃金などの規定も適用されます。また、労働者ですから労働者災害補償保険法(労災)の申請もできます。

今でも、パートだから有給休暇は必要ない。アルバイトに割増賃金は必要ないなどと誤解している会社もありますが、これは明らかに労働基準法違反となりますので、注意が必要です。

パート社員も雇用保険や社会保険に加入する必要があるか?

労働時間や雇用期間により加入しなければならない場合や加入できない場合がある。給料の額は関係ない。

労働基準法は正社員・パート社員・アルバイトなど名称の違いに関係なく適用されることは上記の「正社員・パート・アルバイト・嘱託社員の違いは何?」で書いていますが、雇用保険や社会保険(健康保険・厚生年金保険)では少し内容が違ってきます。雇用保険や社会保険にもパート社員・アルバイトなどの名称がないことは一緒ですが、(雇用保険や社会保険のルーフレットには「パート」という言葉が使われている場合がありますが、これは、一般の人に理解してもらいやすいために労働時間の短い労働者などのことを表示しているもので、法律上「パート」という定義はありません。)雇用保険や社会保険に加入するかどうかは労働時間や雇用期間で決められます。

具体的には下記のようになります。

雇用保険の被保険者になるパート社員
① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
② 31日以上の雇用見込みがあること

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者となるパート社員
① 1日の所定労働時間が一般の社員の概ね4分の3以上であること(一般の社員の1日の所
定労働時間が8時間であれば6時間以上)
かつ
② 1ヶ月の勤務日数が一般の社員の概ね4分の3以上であること(一般の社員の1ヶ月の勤
務日数が20日であれば15日以上)

たとえば、1日の所定労働時間が8時間、1ヶ月の所定労働日数が20日の会社の場合、
・1日の所定労働時間が3時間、一週間の所定労働時間が15時間のパート社員
 雇用保険・社会保険両方とも加入できない
・1日の所定労働時間が5時間、一週間の所定労働時間が25時間のパート社員
 雇用保険は加入しなければならない、社会保険は加入できない
・1日の所定労働時間が6時間、一週間の所定労働時間が30時間のパート社員
 雇用保険・社会保険両方とも加入しなければなりません。

注意していただきたいのは、「加入できない・加入しなければならない」ので、「加入しなくてもよい・加入してもよい」ではないことです。

「保険料の負担が大変」、「夫の扶養に入っているので社会保険に入りたくない」、「雇用保険は入りたいけど社会保険には入りたくない」などの理由で加入手続きを行っていないケースがありますが、加入手続き・保険料納付の義務は会社にあるため、役所の調査で未加入が発覚した場合、その責務を会社が負担しなければならない場合もあるので、適正な手続きを行う必要があります。(雇用保険料や社会保険料は会社負担分と社員負担分がありますが、役所調査により、さかのぼって加入手続きを行わなければならない場合、保険料もさかのぼって納付することになりますが、納付義務者は会社のため、まず、会社が保険料を納めて社員負担分を徴収することになりますが、社員が退職してしまった場合などは、社員徴収分を徴収することが現実的にできなくなる場合もあります。)

採用・面接時の注意事項

採用時における年齢制限は原則禁止。面接は本人の能力や適性を判断するもので、業務に関係ない家族状況などは聞いてはいけない。

社員を採用するときは、求人募集をし、その後に面接を行い、採用するという流れが一般的ですが、求人募集や面接時には注意しなければならないことが数多くあります。

詳細は >> 厚生労働省のホームページ(採用のためのチェックポイント)にも記載されていますが、ここでは基本的な注意点を説明します。

求人募集に関する注意点
① 社員の求人募集を行うときは年齢制限を設けることはできません(雇用対策法)
(年齢は35歳までというようなケース)
② 男性のみ・女性のみという求人はできません。(男女雇用機会均等法)
(男性のみ、男性向けの仕事、営業マン募集、女性は自宅通勤者などのケース)
③ 求職者に誤解を与えるような虚偽の求人広告を出すと処罰されます。(職業安定法)
(実際には無理であるのに、基本給+歩合給で100万円可能などの求人募集)

上記①には例外として「労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合」や「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者などを期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」などは年齢を制限することができ、②には例外として「労働基準法の規定により女性を就業させることができ無い業務(坑内業務など)」や「守衛、警備員等のうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職務」などがありますが、これれはあくまでも例外ですので、会社で求人をするときに年齢などに制限を行う必要がある場合は、その制限が認められるものかどうかを事前に確認して求人募集を行うことが必要となります。

面接時の注意点(次のような内容を質問することはできません。)
① 本人に責任のない事項を質問すること
(本籍・出身地に関すること、両親・家族に関すること、生活環境・家庭環境に関するこ
となど。)
※戸籍謄本や戸籍抄本などを提出させることも含まれます。
② 本来自由であるべき事項を質問すること
(宗教に関するいこと、支持政党に関すること、思想に関すること、労働組合や社会運動
に関することなど。)

本来、会社には採用の自由があり、「企業が特定の思想・信条を有する者をそれを理由として雇い入れを拒んでも当然に違法とすることはできない」という判例もありますが、採用・面接は、応募者に広く門戸を開き、応募者の基本的人権を尊重し、応募者の適性・能力のみを選考の基準とするということを原則にすることが大切です。

労働条件は従業員に明示しなければならない

従業員を採用したときは、労働条件を必ず書面で明示しなければならない。

労働基準法第15条で「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と定められています。この明示方法には、「文書で交付しなければならない事項」と「口頭でもよい事項」のがあり、それぞれ次の事項が定められています。

書面の交付による明示事項
① 労働契約の期間
② 就業の場所・従事する業務の内容
③ 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務
の場合は就業時転換に関する事項
④ 賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切、支払の時期に関する事項
⑤ 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

口頭の明示でもよい事項
① 昇給に関する事項
② 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払
いの事項に関する事項
③ 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項
④ 労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
⑤ 安全衛生に関する事項
⑥ 職業訓練に関する事項
⑦ 災害補償、業務外の疾病扶助に関する事項
⑧ 表彰・制裁に関する事項⑨休職に関する事項
⑨ 休職に関する事項

※パートタイマー(短時間労働者)については、パートタイム労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無について、文書の交付等による労働条件明示が必要です。

これらの項目は会社と従業員との契約の中心をなすもので、労使間トラブルの多くを占めるものです。>> 厚生労働省のホームページ(主要様式ダウンロードコーナー)に労働条件通知書の様式がありますので、この書式を利用したり、会社に使いやすい労働条件通知書を作成し、採用した従業員に交付することで防げる労使間トラブルも数多くあります。

労働基準法に違反している雇用契約はどうなるの?

労働基準法に違反している部分は無効、労働基準法の基準が適用される。

>> 「労務管理の基礎は労働・社会保険関係諸法」で説明しているように、労働基準法は強行法規で、法律関係の当事者の意思に関係なく適用されます。そして、労働基準法第13条で労働基準法に違反した雇用契約について、次のように定めています。

第13条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について
は無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準に
よる。

つまり、労働基準法は強行法規であるため、これに違反する部分は絶対的に無効であるということで、社員が労働基準法違反の労働条件に同意していても(たとえ、社員が労働基準法違反であることを知っていて同意した場合も同じです。)この労働条件は無効ということです。たとえば、会社と社員の間で合意のうえ「この会社には有給休暇はない」という内容の雇用契約を結んでも、この内容は無効で、社員は有給休暇を請求することができ、会社は有給休暇を拒否することはできないということです。

なお、労働条件は労働基準法に違反した場合だけ無効になるのではなく、就業規則などに定めている基準によりも不利益な内容の労働条件についても無効となります。これらの関係を示すと次のようになります。

法令(労基法等など)>労働協約>就業規則>雇用契約

会社によっては、お互いに合意しているのだから、その条件でよいと考えているところもあるようですが、適正な労働条件にする必要があります。社員が在職中の間はこのような労働条件でのトラブルは少ないのかもしれませんが、退職時や退職後に監督署に相談に行きトラブルになるというケースがよくあります。いずれにしても労働基準法などに違反している雇用契約は違法ですので、見直す必要があります。

就業規則を作成しよう

パートタイマーなどを含め、常時10人以上の社員を使用する事業場は就業規則の作成、労働基準監督署への提出義務がある。

就業規則は、従業員の労働時間・賃金等の労働条件や職場の服務規律などを定めて文書にしたもので、労働基準法によりパートタイマーなどを含め、常時10人以上の社員を使用する事業場では、
① 就業規則の作成
② 労働基準監督署への提出
③ 従業金への明示義務があります。

(就業規則については>> 「就業規則の基礎知識」のページを参考にしてください。)

就業規則が正しく作成され、正しく運用されて、はじめて適正な労務管理を行うことができ、労使間の無用なトラブルを未然に防ぐことができます。また、就業規則は労働基準監督署などの調査においては必ず提出を要求されるものです。たとえ、社員が10人未満であってもその目的から作成することが望まれます。

就業規則の作成ができていない常時10人以上の従業員を使用する事業場では、すぐに適正な就業規則の作成を行うことが必要です。また、労働関係諸法令は改正が多く、改正に合わせて就業規則の変更を行う必要があります。会社によっては就業規則は作っているが何年も改定していない会社もありますが、現行の法令に適合した就業規則に改定する必要があります。

適正な就業規則を作成することにより、会社も従業員も「しなくてはいけないこと」・「してもよいこと」・「してはいけないこと」が理解でき、会社は正しい労務管理を行うことができるようになります。

1週間の所定労働時間40時間を守る方法

1カ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制を活用する。

労働基準法では、休憩時間を除き、1日8時間、1週間に40時間を超えて労働させることはできないという規定があり、この1日8時間・1週間40時間を法定労働時間といいます。(残業や休日出勤があり、法定労働時間を超えて仕事をさせる場合は、労働基準監督署に「三六協定書」を提出する必要があります。)法定労働時間は、完全週休二日制(1日の労働時間8時間、1週間に5日の労働で1週間の労働時間が40時間となります。)を想定している規定ですが、1カ月単位の変形労働時間制・1年単位の変形労働時間制を活用することにより一週間の所定労働時間40時間が守りやすくなります。

1ヵ月単位の変形労働時間制の概要

1ヵ月単位の変形労働時間制とは、1ヵ月以内の一定の期間(対象期間)を平均して1週間の労働時間が40時間を超えない範囲において、特定の日・特定の週に法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させることができる制度です。

分かりやすく言うと、たとえば1日の所定労働時間が8時間の会社で月曜日から金曜日まで働くと1週間の労働時間は40時間ですが、その週に国民の祝日が1日あったら1週間の労働時間は32時間になります。この差の8時間を特定の日・特定の週に分配し、対象期間を平均して1週間の労働時間が40時間以下になれば条件を満たしていますということです。

1ヵ月単位の変形労働時間制の導入要件

1ヵ月単位の変形労働時間制を取り入れるためには、
① 対象労働者の範囲
② 対象期間および起算日
③ 労働日および労働日ごとの労働時間
④ 労使協定の有効期間
を労使協定または就業規則に定めることが必要です。

対象期間を1ヵ月とした場合の1ヵ月の労働時間の上限時間

1週間の所定労働時間は 40時間×対象期間の歴日数÷7で計算するので、1ヵ月の労働時間の上限は1ヶ月の日数により下記のとおりとなり、
1ヶ月の日数が31日 177.1時間
1ヶ月の日数が30日 171.4時間
1ヶ月の日数が29日 165.7時間
1ヶ月の日数が28日 160.0時間
この範囲内で各日の労働時間を決めることになります。

割増賃金の支払いが必要となる時間

1ヵ月単位の変形労働時間制における割増賃金の支払いが必要となる時間は次の通りです。
① 1日については、8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超
えて労働した時間
② 1週間については、40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時
間を超えて労働した時間(①で時間外労働となった時間を除く)
③ 対象期間における法定労働時間(1ヶ月の日数が31日の時は177.1時間)の総枠を
超えて労働した時間(①または②で時間外労働となった時間を除く)

1ヵ月単位の変形労働時間制は1ヵ月の中で業務の繁閑に差がある会社やもう少しで完全週休2日を実現できそうな会社に導入しやすい制度です。

1年単位の変形労働時間制の概要

1年単位の変形労働時間制とは、1ヵ月を超え1年以内の一定の期間(対象期間)を平均して1週間の労働時間が40時間を超えない範囲において特定の日・特定の週に法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させることができる制度です。

分かりやすく言うと、国民の祝日が年間で15日あり1日の労働時間を8時間とすると1年で120時間になります。この差の120時間を特定の日・特定の週に分配し、対象期間を平均して1週間の労働時間が40時間以下になれば条件を満たしていますということです。

1年単位の変形労働時間制の導入要件

1年単位の変形労働時間制を取り入れるためには、
① 対象労働者の範囲
② 対象期間および起算日
③ 特定期間(対象期間中の特に業務の繁忙な期間を特定期間として定めることができる)
④ 労働日および労働日ごとの労働時間
⑤ 労使協定の有効期間
を労使協定で定めることが必要です

労働日および労働日ごとの労働時間の設定(対象期間を1年とした場合)

対象期間を1年とし、1年を平均して1週間の労働時間が40時間以内にするためには、1年間の総労働時間は 40時間×365日(対象期間の歴日数)÷7 で計算するので、1年の総労働時間は2,085.7時間未満に設定する必要があます。

また、1年単位の変形労働時間制では1年間の休日の下限が決められていて、具体的には、
① 1日の所定労働時間8時間の場合 年間休日日数105日以上
② 1日の所定労働時間7時間45分の場合 年間休日日数96日以上(閏年は97日)
③ 1日の所定労働時間7時間30分の場合 年間休日日数87日以上
となっています。連続して労働させる日数の限度も6日までと定められています。

このほかに、1年単位の変形労働時間制では

① 週に1日の休日を確保する(連続して労働させる日数の限度は6日)
② 1日の所定労働時間は10時間以内
③ 1週の所定労働時間は52時間以内
(所定労働時間が1週48時間を超える週がある場合、48時間を超える週は連続3週以内)
と定められているので、この範囲内で1年間の労働日(休日)と労働日ごとの労働時間を決めることになります。

割増賃金の支払いが必要となる時間

1年単位の変形労働時間制における割増賃金の支払いが必要となる時間は次の通りです。①1日については、8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間②1週間については、40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間(①で時間外労働となった時間を除く)③対象期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(①または②で時間外労働となった時間を除く)

1年単位の変形労働時間制は1年間の中で業務の繁閑に差がある会社や年間休日を減らすことは難しいが1日の所定労働時間少しなら短くすることができるような会社で導入しやすい制度です。

三六協定書は必ず提出しよう

法定労働時間を超えて労働させる場合は労働基準監督署へ三六協定書の提出が必要。

労働基準法第36条で、
①法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させる場合
②法定休日(週に1日の休日)に労働させる場合
は労働基準監督署に三六協定書を届け出なければならないと規定しています。

つまり、三六協定書を労働基準監督署に提出していないと法定労働時間を超えて残業をさせることや法定休日に休日労働をさせることはできないということです。

三六協定書は、労働基準監督署の調査時に就業規則・労働者名簿・賃金台帳などと一緒に必ず提示を要求されるもので、三十六協定書を労働基準監督署に届け出していない場合は是正勧告を受けます。

三六協定書は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と会社の間で締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
>> 厚生労働省のホームページ(主要様式ダウンロードコーナー)に三六協定書の様式がありますので、利用してください。

三十六協定で定める事項
① 時間外または休日の労働をさせる必要のある具体的な理由
② 対象労働者の業務・人数
③ 1日についての延長時間のほか、1日を超え3ヵ月以内の期間及び1年間についての延長
時間
④ 休日労働を行う日とその始業・終業時刻
⑤ 有効期間

また、法定労働時間を超えて残業させることのできる時間は、三六協定を結べば何時間でもよいということはなく、次のように限度時間が定められているので注意が必要です。

一般の労働者の場合
期 間限度時間
1週間 15時間
2週間27時間
4週間43時間
1ヶ月45時間
2ヶ月81時間
3ヶ月120時間
1年間360時間
対象期間が3ヵ月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者の場合
期 間限度時間
1週間14時間
2週間25時間
4週間40時間
1ヶ月42時間
2ヶ月75時間
3ヶ月110時間
1年間320時間

三六協定書は、法定労働時間を超えて労働させるときに届け出るものですから、たとえば、1日の所定労働時間が7時間の会社が30分残業させる場合は、1日8時間の法定労働時間を超えていないので、労働基準監督署に届け出る必要はありませんが、実務上は急な残業増などに備えて届け出ておいたほうが良いと思います。

営業社員には残業代の支払は必要ない?(事業場外みなし労働時間)

営業社員にも残業代を支払わなければならないときもある。

営業社員には営業手当を支払い、その代わり残業代を支払わない会社がありますが、本当にこれでよいのでしょうか。業界によっては営業社員は夜遅くまで仕事をしなければならないような場合もありますが、すべて営業手当ですまされるのでしょうか。

労働基準法第38条の2は、次のように定めています。

第38条の2 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合にお
いて、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。た
だし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが
必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるとこ
ろにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

これは、「事業場外労働によるみなし労働時間制」と言われるもので、営業社員などが、社外で業務を行なった場合などで、労働時間の計算が困難なときは、通常の所定労働時間働いたものとして取り扱っていいですよということで、一般には、「営業社員には、残業手当は支給しない。」・「出張時には残業手当は支給しない」のように運用されています。

しかし、「事業場外労働によるみなし労働時間制」は労働時間の計算が困難な場合の例外規定で、次のような場合には割増賃金を支払わなければなりません。
① 仕事が深夜(夜10時以降)または法定休日に行われた場合
② 営業社員が所定労働時間外に内勤作業を行った場合(営業社員が終業時刻後に会社に戻り
内勤作業を行ったような場合は内勤作業については労働時間が計算できる。)

たとえば、始業時刻9:00分、終業時刻18:00分、所定労働時間8時間の会社で考えると、上記①により営業社員が深夜10時00分以降に実労働した時間は深夜割り増しの支給が必要になります。(「事業場外労働によるみなし労働時間制」は通常の時間外の割増賃金は支払わなくていよいということで、深夜割増まで支払わなくてもよいというものではありません。)営業社員が9時に出社し、その後外回りを終え、19:00分に帰社し、20:00分まで内勤作業をした場合は、上記②により19:00分から20:00分までの1時間分の割増賃金の支給が必要になります。(内勤作業をしていた時間は、労働時間の計算が困難とはいえないため、残業代の支払いが必要となります。)

会社によっては、営業社員に一切残業代の支給を行わないところがありますが、労働基準監督署の調査ではよく是正を受ける事項ですので、気をつけておかなければなりません。これらの対応としては、深夜は一切残業させない。終業時刻を過ぎたら内勤作業をさせないなどの対策だ必要になります。

また、所定労働時間労働したものとみなされるのは、労働時間を算定し難いものだけですから、次のように労働時間の計算ができる場合は、みなし労働時間制は適用されません。(割増賃金の支払いが必要となります。)
① 携帯電話などで、随時使用者の指示を受けながら労働している場合。
② 訪問先・帰社時間など、当日の業務内容を具体的に指示を受け、その指示通りに仕事を行
なう場合。
③ グループで従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間を管理する者がいる場合。

「事業場外労働によるみなし労働時間制」は、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、通常必要とされる時間労働したものとみなされるので、注意が必要です。たとえば、通常所定労働時間が1日8時間の会社で、「事業場外労働によるみなし労働時間制」を取り入れ、労使協定で「通常必要とされる時間」を1日9時間と定めたときは1時間分の割増賃金を支払わなければなりません。

割増賃金の基礎知識(1)

1日8時間、1週40時間を超えた場合は割増賃金が必要。

割増賃金は次の場合に支払う必要があります
① 法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させた場合
② 法定休日(毎週1回または4週間を通じて4日)に労働させた場合
③ 深夜(午後10時から午前5時の間)に労働させた場合

割増賃金の計算方法
割増賃金=上記①②③の時間数×割増賃金の計算の基礎となる賃金×割増率

①法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させた場合とは
法定労働時間とは、上記の通り1日8時間、1週40時間ですから、1日の所定労働時間が7時間の場合はたとえ30分の残業をさせても1日8時間を超えていませんから通常の時間単価に30分を掛けた賃金を支払えばよく、割増率を掛けた割増賃金まで支払う必要はありません。(多くの会社では所定労働時間を超えた場合に割増賃金を支払っていますが、これは事務手続きの煩雑さを避けるために行っているもので、法律上の義務ではありません。)

②法定休日(毎週1回または4週間を通じて4日)に労働させた場合とは
法定休日とは毎週1回または4週間を通じて4日の休日ですから、たとえば完全週休2日制で土曜日・日曜日が休日の会社で、就業規則に法定休日は日曜日と定めておけば、たとえ土曜日に出勤させても法定休日の割増賃金は支払う必要はありません。
ただし、1日の労働時間を8時間の場合は月曜日から金曜日までの5日間の労働時間が40時間となるため、土曜日の出勤時間は①の法定労働時間を超えて労働させた場合となり、法定労働時間を超えて働かせた場合の割増率を掛けての割増賃金の支払いが必要となります。
後に記載しますが、法定労働時間を超えた場合の割増率は2割5分で、法定休日に働かせた場合の割増率3割5分よりも低いので、この場合は2割5分増しで計算した割増賃金の支払いが必要となりますが、会社によっては休日に働かせた場合に法定休日・法定休日以外の休日に係らず割増率3割5分で計算し割増賃金を支払っていることろもありますが、これは法律で定められた額以上の割増賃金を支払っているということになります。

③深夜(午後10時から午前5時の間)に労働させた場合とは
深夜に労働させた場合とは、単純に午後10時から午前5時の間の間に労働をさせた場合に割増賃金を支払わなければならないということです。
たとえば午前9時から午後6時まで(休憩時間1時間)の会社で朝9時から午後11時まで仕事をさせた場合は午前9時から午後6時までの労働で法定労働時間の8時間を超えますから午後6時からは割増率2割5分以上で計算した割増賃金を支払わなければならないのは当然ですが、午後10時を過ぎての労働に対しては法定労働時間を超えた場合の割増率2割5分に深夜労働の割増率2割5分を加えた5割の割増率が必要になるので、注意が必要です。

割増賃金の計算の基礎となる賃金
割増賃金の基礎となる賃金は時給制・日給制・月給制などにより次のようになります。
時給制の場合
その時間給。(時給900円の社員であれば900円)
日給制の場合
日給を1日の所定労働時間で割った金額。日によって所定労働時間数が異なる場合は、1週間における1日の平均労働時間数。(日給8,000円で1日の所定労働時間8時間の場合は、8,000円÷8時間=1,000円)
月給制の場合
月給を1ヵ月の定労働時間数で割った金額。月によって所定労働時間数が異なる場合は、1年間における1ヵ月の平均労働時間数。(月給320,000円で1ヵ月の所定労働時間が160時間の場合は320,000円÷160時間=2,000円)

なお、割増賃金の基礎となる賃金には
① 家族手当
② 通勤手当
③ 別居手当
④ 子女教育手当
⑤ 住宅手当
⑥ 臨時に支払われた賃金
⑦ 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

を除き、すべて算入しなければなりません。

また、このような名称であればすべて割増賃金の計算の基礎から除外してよいのではなく、内容がその名称に適したものである必要があります。(単身者も含め、すべての従業員に家族手当を支給している場合には家族手当であっても割増賃金の基礎となる賃金になります。)

割増率
法定労働時間を超えた場合の割増率、法定休日に労働させた場合の割増率、深夜に労働させた場合の割増率は次の通りです。
法定労働時間を超えた場合の割増率 2割5分
※1ヶ月の残業時間が60時間を超える時間外労働は5割以上(中小企業については当分の
間、適用が猶予)
法定休日に労働させた場合の割増率 3割5分
深夜に労働させた場合の割増率 2割5分

割増賃金の不払いは新聞・テレビなどでよく報じられている問題で、労使間トラブルにおける監督署への相談件数でも常に上位に入るものです。割増賃金というものがあるのは知っていても、内容を十分に理解していない会社もあります。割増賃金による労使間トラブルを発生させないためには、割増賃金の十分な理解と労働時間管理が必要です。

割増賃金の基礎知識(2)

課長以上だからといって残業代(割増賃金)が不要になるのではない。

課長以上の役職になったら役職手当を支給する代わりに残業代(割増賃金)を支払わない会社が多くありますが、本当にそれでよいのでしょうか。たとえば、今まで残業代として1ヶ月平均して5万円程度もらっていた社員が昇給して、課長手当として3万円の支給を受けた場合には社員にとって、不利益になってしまいます。

労働基準法41条では「監督若しくは管理の地位にある者」は、労働時間・休憩・休日に関する規定は適用しないと定めています。つまり、「監督若しくは管理の地位にある者」には労働時間に関する規定は適用されず、割増賃金の支払い義務はないということです。(但し、深夜割増しについては、除外されず支払義務があります。)

課長になったら役職手当を支給し、残業代を支給しないという会社は、課長は「監督若しくは管理の地位にある者」だから、割増賃金を支払う必要はないと考え、割増賃金を支払っていないのだと思います。

しかし、ここで注意しなければならない事は、労働基準法での「監督若しくは管理の地位にある者」とは、次の要件を満たしている労働者であるということです。
① 労務管理について経営者と一体的立場にあること
② 出勤や退勤の時間について厳格な制限を受けないこと
③ 務管理に関し、その地位にふさわしい待遇がなされていること

つまり、「監督若しくは管理の地位にある者」とは、課長とか部長などの名称によるのではなく、実体として①から③までの要件を満たしているかで判断されることになります。

判例では、「銀行の支店長代理」や「外食チェーン店の店長」について、「監督若しくは管理の地位にある者」とはいえず、残業代の支払いを命じたケースもあります。

このようなケースを考えると、課長以上の役職になったら役職手当を支給する代わりに割増賃金(残業代)を支払わないという会社における労務管理では、
①相応の役職手当を支給する
②タイムカードなどでの労働時間管理をやめる
③遅刻や欠勤による賃金カットをやめる
③社員の採用などの労務管理に関与させる
などの方法で、課長は「監督若しくは管理の地位にある者」と認められやすい制度にしておくことが必要になってきます。

なお、「監督若しくは管理の地位にある者」が適用除外を受けるのは、労働時間、休憩および休日に関する規定で、深夜業(午後10時から午前5時まで)については適用が除外されていないため、支給する必要があります。

割増賃金の基礎知識(3)

基本給に残業代が入っているは要注意。定額残業制を理解しよう。

基本給に残業代も含まれているという会社もあるようですが、原則としてこのような制度は認められません。あくまでも残業代(割増賃金)は別途計算し支給する必要があります。

基本給に残業代も含まれているという制度は「定額残業制」といわれていますが、定額残業制が認められるためには次の条件があります。
① 残業代に相当する部分が、他の賃金と明確に区分されている
② 実際の残業時間で計算された残業代が定額残業代を超えた場合には、その差額が支払われ
ている

つまり、就業規則などに
①基本給のうち○万円は残業代として支給する。
②実際の残業時間で計算された残業代が定額残業代を超えた場合は、その差額を支給する。

などの記載が必要となります。

以上のことから、適法に定額残業制を導入するには、実際に計算した残業代(割増賃金)よりも多い金額を一定の金額として定額残業代を支給する必要があり、経費節減(残業代節減)の対策として定額残業制を導入することは意味がないということが分かります。

そのため、定額残業制のメリットは残業代相当部分を実際の残業代よりも高額にしておき、実務的に残業代の計算を不必要とし、事務の省力化を図ることだと思います。(給与計算業務に時間を掛けないようにする。)

うちの会社は定額残業代を導入しているから残業代の支払いは必要ないと考えている会社も多いですが、定額残業制のトラブルは非常に多いため、定額残業制を導入する際は制度をしっかり理解することが必要です。

最低賃金は強制法規

最低賃金より低い賃金は法律により無効で最低賃金で計算した賃金の支払いが必要。

最低賃金とは、セーフティネットとして国が賃金の最低限度を定め、会社は、その最低賃金額以上の賃金を必ず社員に支払わなければならないという強行法規です。そのため、仮に社員が納得のうえで最低賃金額より低い賃金を定めたとしても、法律によりその賃金は無効とされ、最低賃金額で計算した金額を支払わなければなりません。

また、完全歩合制であっても最低賃金は適用されるため、仮に完全歩合制の営業社員がいて、その営業社員の売り上げがゼロであったとしても、実際に労働した時間に対する最低賃金額は支払う必要があります。

最低賃金はパート社員・臨時社員・嘱託社員などの名称に係らず、すべての労働者にが適用されますが、特例として、
①精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
②試用期間中の者
③軽易な業務に従事する者
④断続的業務に従事する者
などで、都道府県労働局長の許可を受けた場合は最低賃金額を下回る賃金で雇い入れることができます。

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金に限られるため、皆勤手当、通勤手当、家族手当、残業手当などを除いた賃金の合計額で最低賃金の基準を上回ることが必要となります。たとえば、給料の内訳が基本給・職務手当・残業手当・通勤手当の場合には、基本給と職務手当の合計額で最低賃金を上回ることが必要となります。

最低賃金には地域別最低賃金(大阪では時間額838円:平成26年10月5日効力発生日)と産業別最低賃金の2種類があり、どちらも適用される場合には、高い方の賃金が適用されます。最低賃金は毎年のように改定されますので、注意が必要です。
>> (大阪における最低賃金額:大阪労働局のホームページ)

最低賃金を満たしているかどうかは次の計算で確認します。
時間給の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
日給の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
月給の場合
月給÷1ヶ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

最低賃金に違反した場合には罰則が定められていて、①地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった場合は、50万円以下の罰金に処されることがあり、②産業別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった場合には30万円以下の罰金に処されることがあります。

休日の基礎知識

休日は毎週少なくとも1日、または4週間を通じて4日以上の休日が必要。振替休日と代休の違いを理解しよう。

労働基準法第35条で、会社は毎週少なくとも1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を労働者に与えなければならないと規定され、これを法定休日といいます。

休日とは、労働義務がないとされている日をいい、原則として暦日、すなわち午前0時から午後12時までの24時間をいいます。ですから、午前0時から午後12時までの間に労働しない場合が休日であり、所定休日とされている日でも前日の労働が延長されて午前0時を超えた場合などは、原則として、休日を与えたことになりません。

上記規定は、あくまでも休日に関しての最低基準であり、会社としては法定労働時間(1日8時間、1週40時間)も守る必要があるため、たとえば1日の所定労働時間が8時間の場合は、週に1日の休日では1週間の所定労働時間が48時間になってしまうため、実際には週休2日として1週間の所定労働時間を40時間以下にしている会社が多いものです。

休日に関して会社の給与計算担当者からよく聞かれる質問として、振替休日と代休との違いがあります。振替休日と代休は性質の異なるもので、振替休日であれば休日労働の割増賃金は必要ありませんが、代休であれば休日労働の割増賃金が必要になります。振替休日と代休の違いを理解できていない会社が多いようなので、ここで振替休日と代休の違いを整理しておきます。

振替休日
振替休日とは、あらかじめ他の労働日を休日と指定した上で,本来は休日と定められていた日に社員を労働させることをいいます。ですから、振替休日を行なう場合には、振替を行う前に、振替日を社員に通知す必要あがります。
この手続きを行なうと、元の休日は労働日となる一方で,振替休日は労働義務のない休日と取り扱われます。
そのため、元の休日における労働は休日労働とはならず、休日労働の割増賃金の対象にはなりません。
※休日の振替を行うためには、就業規則などに休日の振替があることを明示しておく必要があります。
代休とは,社員を休日に労働させ,その代わりに後日,代わりの休日を与えることで,振替日をあらかじめ指定しないものをいいます。
この場合には、あらかじめ休日が振り替えられていないため、休日の変更はなされていないとされ、労働を行った日は,休日であることに変わりはなく,休日労働とされ、休日の割増賃金が発生しますので、要注意です。

なお、休日は前述のとおり、毎週少なくとも1日の休日、または4週間を通じて4日以上の休日を与えればよく、日曜だからとか国民の祝日だからということで休日を与える必要はありません。

休憩時間の基礎知識

交代でさせられる休憩時間の電話番は違法?休憩時間は一斉に与え、自由に利用させなければならない。

休憩時間は1日の労働時間に応じ次の時間を与えなければなりません。(労基法第34条)
① 1日の労働時間が8時間を超える場合は1時間以上
② 1日の労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は45分以上

1日の労働時間が5時間のパート社員については、1日の労働時間が6時間を超えていないので、休憩時間を与えても、与えなくてもどちらでもよいということです。

この休憩時間はついては、
① すべての社員に一斉に与えなければならない
② 休憩時間は自由に与えなければならない

と規定されています。

昼休み時間などに従業員が交代で電話番をしている会社は、その従業員に休憩時間を自由に与えているとはいえず、完全に業務から離れられる自由時間を与える必要があります。たとえ、ほとんど電話が掛かってこないような会社でも、その時間帯を拘束されていることになりますので、従業員は自由に休憩時間を使うことができないので、労働時間として扱い、別途休憩時間を与える必要があります。
(工場などで、作業の合間に待機する時間。接客業でお客さんを待っている時間。トラックの搬出入時の待ち時間なども同じです。)

どうしても、昼休み時間などに電話番などが必要な場合で、別途休憩時間を与えることができないような会社では、>> 「割増賃金の基礎知識(2)」で説明しているように、労働基準法の労働時間や休憩を適用されない管理職が電話番を行うなどの対応が必要となります。ただし、会社の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り労基法上の違反にはならないので、休憩時間中の外出などに会社の許可を受けさせることも、会社内で自由に休憩できる場合は必ずしも労基法違反とはなりません。

また、休憩時間は全ての従業員に一斉に与える必要があるため、たとえば部署ごとによって休憩時間が異なるようなことも原則としてできません。休憩時間を部署ごとに別々にする必要がある場合には、会社と労働者代表との間で「一斉休憩の適用除外」について労使協定を締結することにより、適法に交代で休憩を与えることができるようになります。

なお、運輸交通業・商業・金融広告業・映画演劇業・通信業・保健衛生業・接待娯楽業・現業以外の官公署の事業は適用除外とされているため、労使協定を締結することなく交代で休憩を与えることができます。

有給休暇の基礎知識(1)

有給休暇は入社後6ヶ月で10日付与。原則として請求された有給休暇は拒否できない。

会社に有給休暇はない、有給休暇を請求したら会社から別の日に休むように言われた、パート社員には有給休暇ないと言われたなど、有給休暇に関するトラブルは多く、会社も有給休暇については正確な知識が必要となっています。

有給休暇については労働基準法第39条で次のような内容が定められています。
① 社員の入社日から起算して6か月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した社員に対して、
最低10日の有給休暇を与えなければならない。
② 有給休暇を取得した日の賃金は原則として、平均賃金または通常の賃金を支払わなければ
ならない。
③ 有給休暇の買い取りはできない。
④ パート社員にも原則として、通常の社員と同様に扱うことが必要。

有給休暇を適切に運用するには労務管理上のいくつかのポイントがありますので、ポイントごとに説明をていきます。

有給休暇の付与日数

有給休暇の付与日数は次の通りです。

勤続勤務年数0.5年1.5年2.5年3.5年 4.5年5,5年6.5年以上
付与日数10日11日12日14日16日 18日20日

従業員から請求された有給休暇は原則として拒否できない

従業員から請求された有給休暇は原則として拒否できないとは、
① 請求された日に有給給休暇を与えなければならない。
② 休む理由に係らず有給休暇を与えなければならない。

ということです。

有給休暇は従業員の権利であり、従業員が請求したときに取得権が成立し、従業員の請求した有給休暇の日は労働の義務は免除され、会社は請求された有給休暇を拒否することはできないということです。当然、有給休暇を取ったことを理由に、皆勤手当を支払わない、賞与を下げるなど、従業員に対して不利益な処分をすることもできません。

しかし、有給休暇は事前(前日の終業時刻前)に請求するものですから、電話などで「今日は有給休暇を取ります。」というように当日になってからの有給休暇の請求に関しては、就業規則に有給休暇は事前に届ける旨の規定がされていれば、有給休暇として取り扱わず、欠勤として取り扱っても法違反とはなりません。(ただし、会社側の都合で、ある従業員には当日の有給休暇を認め、他の従業員には認めない、ということはできません。)

有給休暇の時季変更権と有給休暇の計画的付与

従業員から請求された有給休暇は原則として拒否できないと上述しましたが、原則ですから例外もあります。この例外が①有給休暇の時季変更権と②有給休暇の計画的付与で、次のような場合に認められています。

① 有給休暇の時季変更権
時季指定権(いつ有給休暇を取得するか。)は従業員にありますが、請求された日に有給休暇を与えると事業の正常な運営を妨げるような場合には、会社に時季変更権(請求された日以外の日に有給休暇を与える。)があります。
しかし、この時季変更権はあくまでも例外的に認められているものなので、繁忙期に多数の従業員が一斉に有給休暇を請求してきたが、その日に他の従業員に応援を頼むことができない、派遣社員でも対応できないなどの特別な理由が必要となるため、実務的には時季変更権を使うのは、難しいと思います。

② 有給休暇の計画的付与
有給休暇の計画的付与とは、労使協定で有給休暇を与える時季に関する規定の定めをした場合に、有給休暇のうち5日を超える部分について、会社の指定した日に有給休暇を与えることができるというものです。
この目的は、有給休暇の日を決めることにより有給休暇の取得率を上げるというものです。例えば、夏季休暇や年末年始休暇を設けずに、その期間に有給休暇の計画的付与を行うというような方法で利用している会社があります。

有給休暇の買い取りはできない

有給を取られると困るなどの理由で、有給休暇の買い取りを行っている会社もあるようですが、有給休暇の買い取りは認められません。有給休暇は従業員が自由に取得することができるものですから、有給休暇を取りにくくなるような有給休暇の買い取りは禁止されています。
ただし、退職する従業員がいて、その従業員に退職日以後も残存有給休暇がある場合などは、退職日以後は有給休暇を取得することはできないので、その分の有給休暇を買い取ることは可能です。

退職前の有給休暇の消化(取得)を拒否することはできない

退職前の有給休暇の消化(取得)を拒否することはできない。有給休暇の請求は2年間で時効により消滅します。(労働基準法115条)そのため、1日も有給休暇を取得していない場合、最大40日の有給休暇を取得する権利が従業員に発生する場合があります。
この場合、退職前に従業員から40日間の有給休暇の取得を請求されたら、会社は拒否することはできません。特に中小の製造業などの経営者から、「従業員が会社を休んだら生産がなく売り上げもないのに、有給休暇の賃金を支払う事などできない。」との相談を受けることがありますが、有給休暇は従業員が自由に取得することができるため、有給休暇の取得を拒むことができず。また、退職した後に有給休暇を取得することはできないため、当然に退職後に有給休暇の時季変更権を行使することもできません。

有給休暇の基礎知識(2)

時給・日給の従業員(パート社員など)にも有給休暇は与える必要がある。

>> 「正社員・パート・アルバイト・嘱託社員の違いは何?」で説明しているように、労働基準法には「労働者」という言葉しかなく、「正社員」・「パート社員」・「アルバイト」などの言葉はありません。

そのため、時給・日給やパート社員も入社日から起算して6か月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した社員であれば有給休暇を請求することができ、会社はこれを拒むことはできません。ただ、1週間の所定労働日数が4日以下、かつ1週間の所定労働時間が30時間未満のパート社員は、通常の従業員よりも有給休暇の取得日数が少なくなるだけです。

また、清掃業務などで1日の所定労働時間が1時間のパート社員にも入社日から起算して6か月継続勤務し全労働日の8割以上出勤したときは、有給休暇を与える必要があります。(1日の所定労働時間が短くても有給休暇は与える必要があります。)

1週間の所定労働日数が4日以下、かつ1週間の所定労働時間が30時間未満のパート社員の有給休暇の付与日数は次のとおりです。

① 週所定労働日数が4日または1年間の所定労働日数が169日から216日

勤続勤務年数0.5年1.5年2.5年3.5年 4.5年5,5年6.5年以上
付与日数7日8日9日10日12日 13日15日

② 週所定労働日数が3日または1年間の所定労働日数が121日から168日

勤続勤務年数0.5年1.5年2.5年3.5年 4.5年5,5年6.5年以上
付与日数5日6日6日8日9日 10日11日

③ 週所定労働日数が2日または1年間の所定労働日数が73日から120日

勤続勤務年数0.5年1.5年2.5年3.5年 4.5年5,5年6.5年以上
付与日数3日4日4日5日6日 6日7日

④ 週所定労働日数が1日または1年間の所定労働日数が48日から72日

勤続勤務年数0.5年1.5年2.5年3.5年 4.5年5,5年6.5年以上
付与日数1日2日2日2日3日 3日3日

会社の担当者から、時給の従業員や1日の労働時間が短い従業員(例えば、1日の所定労働時間5時間のパート社員)に対して、有給休暇の賃金はどうやって計算するのかと聞かれることがよくありますが、この場合、1日の有給休暇に対して時給の社員であれば時給×1日の所定労働時間数が有給休暇取得時の賃金となり、1日の所定労働時間5時間のパート社員の場合は5時間分の賃金を支払うようになります。

男女同一賃金の原則・男女雇用均等法のポイント

女性であることを理由とする賃金差別・採用差別・昇給差別などは禁止されている。

労働基準法第4条は女性であることを理由とする賃金差別を禁止しています。

第4条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱
いをしてはならない。

この規定は、業務内容・業務能力・業務経験や年齢・勤続年数などが同じ男性社員と女性社員がいた場合に、単に「女性だから」という理由だけで、賃金について差別をしてはいけないということです。たとえば、同じ業務内容・同じ年齢・同じ学歴の男女2名の新卒社員を採用する場合に女性の賃金を差別してはいけないということです。

「男だから、女だから」という理由でなく、業務内容・業務能力・業務経験や年齢・勤続年数の違いなど、合理的な理由によって、従業員の賃金を区別することは問題ありません。(業務能力などの結果として、ある男性社員とある女性社員の賃金が異なっていても問題は生じないということです。)

一般的には女性の賃金が男性に比較して低いということで問題になりやすいものですが、反対に女性だからということだけの理由で、賃金について有利に取り扱うことも禁止されます。つまり、男女の区別によって差別的取り扱いをしてはならないとは、男女の区別により、不利に取り扱うことも、有利に取り扱うことも認められないということです。

労働基準法では賃金の差別禁止についてのみ規定されていますが、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(通称:男女雇用機会均等法)でも次のような差別禁止の規定があるので、注意が必要です。

男女雇用均等法による差別の禁止

雇用管理の各ステージにおける性別を理由とする差別の禁止 募集・採用、配置(業務の配分・権限の付与を含む。)・昇進・降格・教育訓練、一定の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由とする差別を禁止
間接差別の禁止 実質的に性別を理由とする差別となるおそれがあるものとして
① 社員の募集または採用にあたって、身長・体重・体力を
要件とすること。
② コース別雇用管理における「総合職」の従業員の募集ま
たは採用にあたって、転居を伴う転勤に応じることがで
きることを要件とすること。
③ 従業員の昇進にあたり、転勤の経験があることを要件と
すること。
の禁止。
女性労働者に係る措置に関する特例 性別による差別的取扱いは原則として禁止。ただし、男女社員間に事実上すでに生じている格差を解消することを目的として行う女性社員のみを対象とした取り扱いや、女性社員を優遇する取り扱いは特例として認めている。
妊娠・出産などを理由とする不利益な取り扱いの禁止 ① 婚姻・妊娠・出産を退職理由とする定めの禁止
② 婚姻を理由とする解雇を禁止
③ 妊娠・出産・産休取得その他厚生労働省令で定める理由
による解雇、その他不利益な取り扱いの禁止
④ 妊娠中・産後1年以内の解雇は、会社が妊娠などによる
解雇でないことを証明しなければならない限り無効。
セクシャルハラスメント
対策
職場におけるセクシャルハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を会社に義務付け。
母性健康管理措置 妊娠中・出産後の女性社員が保健指導・健康診査を受けるための時間の確保、当該指導または審査に基づく指導事項を守ることができるようにするため必要な措置の実施を会社に義務付け 。

育児休業・介護休業法のポイント

育児休業期間は原則として子が出生したときから1年以内で従業員が申し出た期間。育児休業・介護休業は男性社員も請求できる。

育児休業・介護休業は仕事と子育てや介護を両立支援するための制度で、会社は育児休業・介護休業・子の看護休暇・介護休暇・所定外労働の制限・所定労働時間の短縮措置・時間外労働の制限及び深夜業の制限について、その申出をしたこと、または取得などを理由として、従業員に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることはできません。

ここでは、育児や介護に関し、どのような両立支援制度があるのかを説明します。(育児休業や介護休業は正社員のみではなく、一定の条件を満たすパート社員・派遣社員・契約社員も取得することができます。)

育児休業制度
子が1歳に達するまで、(保育所に入れないなど一定の要件を満たす場合は、子が1歳6ヶ月に達するまで。両親ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2ヶ月に達するまでの1年間。)申し出をすることにより育児休業を取得することができます。

介護休業制度
要介護状態にある対象家族(配偶者・父母・子・配偶者の父母、同居・扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫)1人につき、常時介護を必要とする状態ごとに1回の介護休業(通算して93日まで。)を取得することができます。

子の看護休暇制度
小学校入学までの子を養育する労働者は、申し出ることにより、小学校入学前の子が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで病気・けがをした子の看護のために、休暇を取得することができます。

介護休暇制度
要介護状態にある対象家族(配偶者・父母・子・配偶者の父母、同居・扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫)を介護する労働者は、申し出ることにより、要介護状態にある対象家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで介護のために、休暇を取得することができます。

短時間勤務などの制度
会社は3歳に満たない子を養育する労働者で、育児休業をしていない者からの申し出により取得することができる短時間勤務制度(1日の労働時間を原則6時間とする措置を含む。)を設けなければなりません。
会社は常時介護を必要とする状態にある対象家族(配偶者・父母・子・配偶者の父母、同居・扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫)を介護する労働者で、介護休業をしていない者からの申し出により取得することができる短時間勤務制度・フレックスタイム制・始業終業時刻の繰り上げ繰り下げ・介護費用の援助措置のいずれかの措置を講じなければなりません。

所定外労働の免除
会社は3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合は、所定労働時間を超えて労働させることはできません。

時間外労働の制限
会社は小学校入学までの子を養育し、または常時介護を必要とする状態にある対象家族(配偶者・父母・子・配偶者の父母、同居・扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫)の介護を行う労働者が請求した場合は、1ヶ月24時間、1年150時間を超えて時間外労働をさせることはできません。

深夜業の制限
会社は小学校入学までの子を養育し、または常時介護を必要とする状態にある対象家族(配偶者・父母・子・配偶者の父母、同居・扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫)の介護を行う労働者が請求した場合は、深夜(午後10時から翌日午前5時まで)において労働させることはできません

上記のうち、育児休業中は健康保険料・厚生年金保険料が免除されるほか、育児休業中・介護休業中はそれぞれ育児休業給付金・介護休業給付金が支給されます。

未成年者を雇用するときの注意点

未成年者・年少者・児童を労働者として働かせるときの注意点。

労働基準法は、その肉体的な面や精神的な面から保護が必要ということで、未成年者(満20歳未満の者)年少者(満18歳未満の者)児童(満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの者)に区分して、通常の従業員とは別な保護規定を設けています。

年少者や児童を雇用するケースは少ないとは思いますが、次に未成年者を雇用する場合のポイントを載せておきますので、年少者満を採用する場合には年少者には特別な制限があることを前提に採用の可否を考慮する必要があります。

最低年齢 (労働基準法第56条)
会社は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでは労働者として働かすことはできません。

※例外的に、非工業的事業では満13歳以上の者、映画製作・演劇の事業では満13歳未満の者でも労働基準監督署の許可を得ることで、就学時間外に働かせることができます。

年少者の証明(労働基準法第57条)
① 満18歳未満の年少者を使用する場合には年齢証明書
② 児童を使用する場合には年齢証明書・学校長の証明書・親権者などの同意書
を会社に置いておく必要があります。

未成年者の労働契約(労働基準法第58条)
親権者(両親など)が、未成年者に代わって労働契約を結ぶことは禁止されています。そのため、未成年者が労働契約を結ぶときは、未成年者が親権者などの同意を得て、自分で労働契約を結ぶことになります。また、未成年者が結んだ労働契約が未成年者本人にとって不利であるときは、親権者や労働基準監督署長は労働契約を将来に向かって解除することができます。

年少者の労働時間(労働基準法第60条)
年少者については、1日8時間・1週40時間の法定労働時間が適用されるため、1ヶ月単位の変形労働時間制や1年単位の変形労働時間制などの変形労働時間制は適用されません。
児童については、休憩時間を除き、就学時間を通算して1日7時間・1週間について40時間の労働が限度とされています。

※年少者については、1週間の労働時間が40時間を超えない範囲内で、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮し、他の日の労働時間を10時間まで延長することはできます。

※年少者については、1週間について48時間、1日について8時間を超えない範囲内において、1ヶ月単位の変形労働時間制や1年単位の変形労働時間制によって労働させることはできます。

年少者の深夜業(労働基準法第61条)
年少者を深夜(午後10時から午前5時)に働かせることは原則として禁止されています。ただし、次の場合は、例外として深夜に働かせることができます。
・交代制で勤務する16歳以上の男性。
・交代制による事業で、労働基準監督署の許可を得た場合は午後10時30分まで働かせるこ
とができる。
・農林水産業の事業・保健衛生業の事業・電話交代の業務
・災害などにより臨時の必要がある場合

女性社員のルール

産前産後休業・妊産婦の労働時間・育児時間・生理休暇など。

労働基準法や男女雇用均等法などにより、原則として男女の差別はしてはいけませんが、男性と女性では身体的な違いがあるのは当然で、労働基準法は女性社員に対し、次のような特別な保護規定を設けています。

坑内業務の就業制限(労働基準法第64条の2)
妊娠中の女性および使用者に申し出た産後1年を経過しない女性を、坑内業務に就かせることはできません。また、坑内業務のうち、人力による掘削業務などの業務に女性を就かせることはできません。

妊産婦の就業制限業務(労働基準法第64条の3、女性労働基準規則第2条第1項)
× 女性を就かせてはならない業務△ 女性が申し出た場合就かせてはならない業務
○ 女性を就かせてもさしつかえない業務

女性労働基準規則 第2条第1項 就業制限の内容
その他
の女性
1号 重量物を取り扱う業務(表2参照)× ××
2号 ボイラーの取扱いの業務×
3号 ボイラーの溶接の業務×
4号 つり上荷重が5トン以上のクレーン、デリック又は制限荷重が5トン以上の揚貨装置の運転の業務
×
5号 運転中の原動機又は原動機から中間軸までの動力伝導装置の掃除、給油、検査、修理又はベルトの掛換えの業務
×
6号 クレーン、デリック又は揚貨装置の玉掛けの業務(2人以上の者によって行う玉掛けの業務における補助作業の業務を除く。)
×
7号 動力により駆動される土木建築用機械又は船舶荷扱用機械の運転の業務
×
8号 直径が25センチメートル以上の丸のこ盤(横切用丸のこ盤及び自動送り装置を有する丸のこ盤を除く。)又はのこ車の直径が75センチメートル以上の帯のこ盤(自動送り装置を有する帯のこ盤を除く。)に木材を送給する業務
×
9号 操車場の構内における軌道車両の入替え、連結又は解放の業務
×
10号 蒸気又は圧縮空気により駆動されるプレス機械又は鍛造機械を用いて行う金属加工の業務
×
11号 動力により駆動されるプレス機械、シャー等を用いて行う厚さが8ミリメートル以上の鋼板加工の業務
×
12号 岩石又は鉱物の破砕機又は粉砕機に材料を送給する業務
×
13号 土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが5メートル以上の地穴における業務
×
14号 高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務
×
15号 足場の組立て、解体又は変更の業務(地上又は床上における補助作業の業務を除く。)
×
16号 胸高直径は35センチメートル以上の立木の伐採の業務
×
17号 機械集材装置、運材索道等を用いて行う木材の搬出の業務
×
18号 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、シアン化水素、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
×××
19号 多量の高熱物体を取り扱う業務×
20号 著しく暑熱な場所における業務×
21号 多量の低温物体を取り扱う業務×
22号 著しく寒冷な場所における業務×
23号 異常気圧下における業務×
24号 さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務
××

(表2)下の表の左欄に掲げる年齢の区分に応じ、それぞれ右欄に掲げる重量以上の重量物を取り扱う業務

重量(単位:kg)
断続作業継続作業
満16歳未満12
満16歳~満18歳未満12
満18歳以上12

労災事故で会社が損害賠償を請求される?

過労死や会社設備の不備などによる労災事故では、安全配慮義務違反で損害賠償請求される場合がある。

たとえ、パート社員が1人であっても、従業員が1人以上いる会社には、必ず労災に加入する義務があります。(労災は強制加入で、たとえ会社が加入してなくとも本人の請求により労災保険は給付されます。)

会社が労災保険の加入手続を怠っていた期間中に労災事故が発生した場合、遡って保険料を徴収するほかに、労災保険から給付を受けた金額の100%または40%を会社から徴収することになっています。

労災事故が生じてしまった場合、労災の手続きを取るのは当然ですが、被災された従業員から損害賠償を請求される場合もあります。

確かに労災事故と認定されると治療費が現物支給(医者に行ったときに治療費を払わなくてもよい)される療養補償給付、会社を休んだ時の休業補償給付、体に一定の障害が残ったときの障害補償給付、死亡したときの遺族補償給付や葬祭料などの保険給付がされます。しかし、労災保険では被災された従業員やその家族の精神的な被害までは保障されません。

新聞やテレビなどで報道される過労死や業務上のストレスなどによる自殺などでは、会社の安全配慮義務違反ということで裁判を起こされ、会社が敗訴するケースがあります。これは、会社は従業員に仕事をさせるうえで、従業員の生命や身体の危険から保護する義務があるということで、その義務を果たさなかった場合には、損害賠償を支払わなくてはならない場合があるということです。会社の設備上の不備により社員が労災を被った場合も同じです。このような損害賠償請求には、会社の存続にかかわるような金額を請求される場合もあるので、会社はその対応をしておく必要があります。

労災は、よく設備上の不備と人的不注意の片方または両方の原因で生じるといわれます。会社は、まず設備上の不備をなくしていかなくてはなりません。また、過労死や業務上のストレスによる自殺を防ぐためには、①法律で定められた健康診断や医師の面談指導の順守を行う。②過重な労働をさせない。(やむを得ず、過重と認められる業務を行っている社員については、健康状態のチェックを常に行う。)③日頃から従業員の体調・言動などに注意を払い、何らかの前兆があれば速やかに適切な対処を行うなどの対応を行う必要があります。

問題社員(会社とトラブルを起こす社員)の対応は、注意・指導を行い、必ず書面で記録を残すことからはじめる。

解雇を行うためには再三再四の注意・指導を行い本人の自覚を促したという事実が必要。

問題社員(会社とトラブルを起こす従業員)には、
① 遅刻や欠勤が多い
② 協調性がない
③ 上司の指示を守らない
④ 残業を拒否する
⑤役職者として採用したのに能力がない
⑥業務に合わない派手な服装をしている
などなど、本当にいろいろな問題社員がいます。

業務上支障がない程度の問題や、1回の注意や指導などで改善されれば問題ないと思いますが、問題社員の能力や性格により何度注意や指導をしても改善されない場合もあります。

言い方は悪いですが、問題社員本人の能力・性格により、いくら会社が手間暇かけて何度も注意・指導しても改善することができない社員もいるという事です。また、自分の権利だけ主張して、自分の義務は顧みないようなモンスター社員といわれる従業員もいます。

このような、何度も注意・指導をしても改善されない、または改善が見込まれない問題社員がいることによって、職場環境が乱れる、チームワークが乱れ業績に影響が出るなど、会社にとって重大な不利益が生じる場合には、その従業員に会社を辞めてもらう必要が出てくることも考えなければなりません。その従業員が自主的に退職しない場合には最終的には解雇を考える必要が生じる場合もあります。(解雇については、>> 「普通解雇を行うときの注意点」参照)そのため、このような問題社員への対応は最終的には解雇もあり得るという前提に行う必要があります。

このような問題社員に対して、何回も注意や指導をしているという会社は多いと思いますが、文書で記録として残している会社は少ないようです。しかし、会社としては解雇の必要性も考え、また後々のトラブルを避けるためにも文書で記録しておくという事が必要になります。

文書で記録しておけば、
①再度の注意・指導を行うとき
②自主退職を勧める場合や解雇を行う場合
に、会社にとって有利な資料となります。

そのため、この記録は①いつ、②誰を、③誰が、④なぜ、⑤どこで、どのような方法で、注意・指導したのかを明確に記録しておく必要があります。

会社にとって困るのは、問題がこじれ、問題社員が監督署に相談に行った、裁判を起こした、労働組合に相談に行ったような場合の対応ですが、このような場合でも文書で記録が残してあれば、会社側に有利な証拠になります。

また、よほど重大な問題(多額の使い込みをした、殺傷事件を起こしたなど。)でもない限り即時解雇を行うことはできず、解雇を行うためには再三再四の注意・指導を行い、本人の自覚を促したという事実が必要になりますが、裁判になってしまった場合には、注意・指導したという事実は会社が証明する必要があります。その場合にも文書で記録を残しておけば証拠となるので、問題社員と対応するときには、必ず書面で記録を残しておく必要があります。

社員に対する制裁にはルールがある。

損害賠償予定の禁止・1回の処分による罰金は1日の賃金の2分の1まで。

会社は、従業員に対して労働契約の不履行について、違約金を定め、または損害賠償を予定する契約をするこはできません。(労働基準法第16条)

たとえば、
① 自分勝手に会社を辞めた場合は会社に迷惑をかけるから違約金を支払え
② 会社に損害を与えた場合には100万円支払え

などの契約はすることができないということです。

会社としては、何か損害を受けたときのための予防としてこのような契約を結びたいと思う場合もあるかもしれませんが、このような契約が有効とされると強い立場の会社がその力を背景に異常に高い損害賠償が定めたり、社員の退職の自由が制限されるなどの問題があるため、このような契約をすることは禁止しています。(従業員の親や、身元保証人と同じような契約をすることも禁止されています。)

これは、あらかじめ金額を決めておくことが禁止されているのであって、実際に従業員の責任により発生した損害について賠償を請求することまで禁止したものではありません。つまり、上記②のように「会社に損害を与えた場合には100万円支払え」というような契約はすることができませんが、実際に損害が発生した場合に、その実損額を賠償させることまでも禁止しているものではありません。

また、多くの会社では制裁規定として減給(罰金)の規定を定めていますが、この減給もいくらでもできるものではなく、労働基準法第91条により、
① 1回の違反行為に関する制裁における減給は、平均賃金の1日分の半額以下
② 1賃金支払期間(給与算定期間)に数回の違反行為をしても賃金の総額の10分の1を超
えることができない

と定められています。

また、賞与から減給する場合も1回の違反行為に関する制裁における減給は、平均賃金の1日分の半額以下。総額は賞与額の10分の1を超えることはできません。

具体的に考えると、1日の平均賃金が10,000円の場合は1回の違反行為で減給できる上限は5,000円。ある月の賃金総額が300,000万円の従業員が1ヶ月間に何回も違反行為を行った場合でも賃金総額の10分の1(30,000円)までしか制裁としての減給はすることができないということになります。注意していただきたいのは、これはあくまでも制裁による減給に関する規定のため、課長から係長に降格した結果として給料が下がったような場合には適用はありません。

定年は60歳でだいじょうぶ?

高年齢者雇用安定法により、雇用義務年齢は65歳。

勘違いしやすいのですが、定年年齢のことは労働基準法に定められているのではなく、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の第8条で次のように定められています。

第8条 事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない。

そして、第9条で高年齢者の雇用確保措置として次のように定められいます。

第9条 定年(65歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
1 当該定年の引上げ
2 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者を
その定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
3 当該定年の定めの廃止

継続雇用制度とは、例えば1年の有期雇用契約を結び、従業員が65歳になるまで契約更新を行うというようなものです。この場合、継続雇用を希望者する従業員全員を65歳になるまで雇用する必要があります。(平成25年3月31日に労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められています。)

なお、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、継続雇用しないことができます。(継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められています。 )

小さな会社では定年制度自体がないという会社もありますが、一般的には定年制度があります。しかし、上記のように定年があるといっても定年年齢が雇用義務年齢に達していない場合は、雇用義務年齢まで引き続き雇用しなければならないことに注意をする必要があります。なお、本人が継続雇用を希望しないときは、定年退職として処理して問題はありません。

解雇を行うときの基礎知識

どのようなときに解雇できるか、懲戒解雇と普通解雇の違いは何か。

会社から解雇の相談を受けるケースはよくあります。この場合、「○○社員を解雇したい」という話から始まることが多ものです。この場合、まず解雇できるケースか解雇できないケースかを考える必要があります。

解雇とは、会社による一方的な意思表示によって従業員との雇用契約を将来的に解消する行為ですが、いつでも自由に会社が解雇をできるわけではありません。

また、解雇ができるケースであっても解雇が普通解雇なのか懲戒解雇なのかによって手続も変わってきます。解雇は従業員の生活にとって非常に重要な問題であり、監督署での相談数も多く、会社にとっても対応を一歩間違えると大きな労使間トラブルになり、裁判・労働審判・あっせんなどに発展してしまうことも考えておかなければなりません。ここでは、まず解雇とはどのようなものなのか、どのようなときに解雇ができるのか、普通解雇と懲戒解雇はどのように違うのかなど、解雇を行うときの基礎知識を説明します。

解雇とは「会社による一方的な意思表示によってから従業員との雇用契約を将来的に解消する行為」と説明しましたが、分かりやすくいってしまえば、「解雇をした後は仕事に来るな、給料も払わないない。」ということで、従業員にとっては生活の糧を失う大問題です。日本では契約の自由があるので、大原則としては解雇も自由にできそうですが、実務的には会社がいつでも自由に解雇を行うことができるものではなく、次のようなことに注意をしなければなりません。

① 労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間およびその後30
日間。女性の産前産後休業の期間およびその後30日間は解雇することができない。
(労働基準法第19条)
※労働基準監督署長の許可を受けた場合などの例外もあります。
② 使用者は、労働者を解雇しようとする場合は、30日以上前に予告するか、30日分以上
の解雇予告手当を支払わなければならない。(労働基準法第20条)
③ 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効
とする。(労働契約法第16条)

また、「解雇予告手当を支払えばいつでも解雇できる」と勘違いしている経営者も多いようですが、上記①のような場合(解雇制限期間)には解雇を行うことはできず、③で記載しているように、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇が無効となってしまいます。まずは、このような要件に当てはまるかどうかを検討しなければなりません。

次に、解雇が普通解雇に該当するのか、懲戒解雇に該当するのかを判断する必要があります。普通解雇と懲戒解雇は次のように区別されます。

普通解雇
普通解雇とは、会社側の理由であれ、従業員側の理由であれ、将来的に雇用契約を継続することはできないという理由により、会社側の一方的な理由で雇用契約を解消するものです。
なお、普通解雇のうち会社の経営上の理由により人員削減を行う場合には一般的に整理解雇といわれます。
懲戒解雇
懲戒解雇とは、企業秩序違反を犯した従業員に対して、会社が罰として一方的に雇用契約を解消するものです。

つまり、普通解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であれば、30日以上前に予告するか解雇予告手当を支払うことにより可能となりますが、懲戒解雇を行う場合はこのほかに企業秩序違反を犯したという事実が必要となります。なお、解雇は退職に関する事項として、就業規則に必ず記載しなければいけない事項ですから、解雇を行う場合は就業規則に解雇の事由を記載する必要があります。

特に懲戒解雇は懲戒罰として会社が行うものですから、就業規則には
①どのような行為をしたら
②どのような罰(始末書を書かせる・減給を行う、懲戒解雇を行うなど)を受けるか
③どのような方法(たとえば、労使による懲罰委員会の開催)で懲戒処分を行うか
などを記載しておく必要があります。

就業規則の内容にあった手続きがされていないと、裁判では会社にとって非常に不利益な証拠となってしまいます。

実際は、普通解雇なのか懲戒解雇の判断が困難なケースも多く、例えば、すばらしい営業実績を持つ人材をそれなりの地位・給料で採用したが営業成績が悪く普通解雇が可能な場合、単に営業成績が悪いだけでは罰としての懲戒処分を行うことはできないため普通解雇として対応しますが、何度注意しても仕事をさぼって(営業に行きますといって、パチンコをしている場合など)成績が悪い場合は、就業規則の懲戒規程の中に「職務に専念しないとき」、「業務に関し、虚偽の報告をした場合」には懲戒処分を行う旨の規定があれば懲戒解雇で対応する場合もあります。

裁判になると普通解雇であれば有効でも懲戒解雇では無効と判断されるような場合もあるので、普通解雇で対応するか、懲戒解雇で対応するかは慎重に判断をする必要があります。(裁判で懲戒解雇についての争いになった場合、懲戒解雇は認められそうもないから、懲戒解雇から普通解雇に変えるということは認められません。)

実際に相談を受けた場合は、会社の秩序を守るため、形式上どうしても懲戒解雇をする必要がある場合を除き、実務的には従業員から退職願を取る、または、就業規則の普通解雇に「懲戒事由に該当するが、その程度が軽いとき、または情状の余地があるとき。」などの記載をしておき、普通解雇で処理する場合が多いものです。

いずれにしても、解雇の問題を処理するためには、会社にとっても従業員にとっても重要な問題なので、感情的に対処することなく、法律に則り冷静に対応することが必要です。

普通解雇を行うときの注意点

解雇予告手当を支給しても、解雇が有効とならない場合もある。

普通解雇は会社側の理由であれ、従業員側の理由であれ、将来的に雇用契約を継続することはできないという理由により、会社側の一方的な考えで雇用契約を解消するもの >> 「解雇を行うときの基礎知識」で説明しましたが、実際に普通解雇に関する相談で多いのは、能力不足、職務態度不良、協調性がないなどですが、このような普通解雇では次のようなことに注意をしなければなりません。

>> 「解雇を行うときの基礎知識」で説明したように、解雇は退職に関する事項として、就業規則に必ず記載しなければいけない事項ですから、就業規則作成義務のある社員10名以上の会社では、解雇事由を就業規則に記載しなければなりません。

今までの裁判例を考えると、就業規則に記載された解雇事由以外で解雇するのは難しいようです。そのため、就業規則に全ての解雇事由を記載する必要がありますが、実務的にはあらゆる事態を想定して、全ての解雇事由を記載するということはできないので、一般的な解雇事由として以下のような事由を記載するとともに、
・勤務成績が著しく不良な場合
・精神または身体の状態により職務に耐えられない場合
・協調性がなく、他の社員と円滑に業務を遂行できない場合
・企業維持の目的のため、人員整理せざるを得ない場合
・懲戒事由に該当するが、その程度が軽いとき又は情状の余地があるとき
いろいろな事例に対応できるよう「当社の社員として適格性を欠く場合」「上記に準ずるような場合」などのような包括的な事由を記載しておくことも必要になります。

また、特に注意しなくてはいけないことは、たとえ、解雇事由に該当するような行為を従業員が行ったとしても、1回だけの行為で解雇を行うことは難しいということです。

>> 「問題社員の対応・・・」ところで何度も注意・指導が必要と記載しているのはこのことで、1回の行為で懲戒解雇が可能と考えられる「多額の業務上横領」・「社内での重大な暴力事件」のような場合を除き、裁判になった場合、普通解雇に該当する1回の行為だけでは、解雇は認められないケースが普通です。

裁判で普通解雇が認められるためには、解雇事由に該当する場合であっても、会社が注意指導を行い、本人に改善の機会を与えることが求められます。社長から「ある従業員に協調性がなく勤務態度にも不満があり頭にきて、つい解雇すると怒鳴ってしまったが、後で社員が労働組合に加入してトラブルになっているが何とかならないか」のような相談を受けることがありますが、このような場合で事前に会社が本人に何も注意指導をしていなかったり、本人に改善の機会を与えていなかった場合には、その対処に非常に苦慮する場合が多いものです。

たとえば、協調性がない社員を普通解雇したいというような相談があったときは、次のようなアドバイスをしています。

① 協調性がないと言って、そのことだけですぐに解雇するのは難しいですよ。その社員の恊調整不足を直すための方法を会社で何かする必要がありますよ。(注意や指導など何らかの方法で社員の恊調整不足を直すためのことを会社で行っていないと、裁判で解雇が認められないケースが多い。)

② 協調性がないといっても程度問題で、解雇をするためには、協調性がないことによって現実に会社の業務に支障が生じるという程度の恊調整不足が必要ですよ。(解雇を行うためには、会社に対して通常必要とされる労務提供がされていないという事実が必要。)

③ 協調性があるかないかは主観的なものなので、その社員がどんなことをして(どんなことがあって)他の従業員と協調性がないと判断したのか具体的な事例を記録に取る。そのときどのような方法で注意・指導をしたのかを記録に取る。必要があれば他の社員からも話を聞き記録に取る。(トラブルになった際の記録として役立つほか、口頭だけでは客観的な資料となりにくい。)

④ 本人に対し、他の社員との協調性不足のため 、会社の業務に支障を生じていることを説明し、改善を求める。(解雇を行うためには、本人に改善の機会を与えることが必要で、改善されない場合に解雇が可能となる。)

⑤ 中小企業で、配置転換を行うことができない場合を除き、配置転換を行い、他の職場での協調性の有無を見る。(他の職場で協調性があれば解雇はできない。配置転換の際には、本人に恊調整不足のため業務に支障が生じているための配置転換であり、次の職場では改善するよう指導する。) 大きな会社での新卒採用者では、2回以上の配置転換が必要。(1回の配置転換では裁判で解雇が認められないケースがある。)

なにか、まどろっこしい感じもしますが、協調性のない社員を普通解雇するときは、上記のような手続きを行い、30日以上前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当を支払って、普通解雇が可能になるということです。

しかし、たとえ解雇が可能なケースであっても後々のトラブル防止のためには、可能な限り解雇は避け、お互いのためにも十分な説明を行い、退職願をもらっての自己都合退職または合意退職という形で円満退職に持っていく方法を探すというのが現実的な方法で、解雇は最後の方法と考えるのがよいと思います。

懲戒解雇を行うときの注意点

懲戒解雇を行うためには就業規則に懲戒事由・懲戒の程度・懲戒の内容・懲戒の手続きなどの記載が必要。

懲戒解雇を行う場合も >> 「普通解雇を行うときの注意点」で、普通解雇に該当する1回の行為だけでは、解雇は認められないケースが普通ですと説明したのと同じように、よほど重大に事由でないと1回の行為で懲戒解雇が裁判で認められるのは難しいようです。

懲戒解雇は懲罰として最後の手段であり、一般的に懲戒解雇の場合は退職金を不支給とするなどの規定を設けているケースも多いため、裁判所では普通解雇よりも厳しい判断が下されやすく、懲戒解雇を行うまでに、懲戒処分(けん責・減給・出勤停止など)を通じて本人に改善させる機会を与えず、いきなりの懲戒解雇は厳しすぎると考えているようです。

懲戒の規定はあるけれど実際には懲戒処分は行わず、口頭注意だけで済ませてきたという会社も多いと思いますが、適切に懲戒解雇を行うためにはけん責・減給・出勤停止などの段階を経て懲戒解雇が可能になるということを考えて、懲戒処分に該当する事案が生じた場合には適切に懲戒処分を行っておくことが必要になります。

また、懲戒解雇であれば解雇予告手当は必要ないと考えている会社も多いようで、就業規則に懲戒解雇を行ったときは解雇予告手当を支給しないと記載されている会社もありますが、解雇予告手当を支払わなくてよいのは労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けた場合に限られ、懲戒解雇だからといって当然に解雇予告手当が不要になるものではありません。

監督署の認定には基準があり、たとえ会社で懲戒解雇を行っても、基準に該当しない場合には、30日以上前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当を支払って懲戒解雇を行う必要があります。予告もしないで、解雇予告手当も支払わないで、解雇予告除外認定も申請しないで即日に懲戒解雇を行うということは違法行為になるので、注意が必要です。

なお、監督署では「従業員の責に帰すべき事由」として除外認定申請があったときは、従業員の勤務年数、勤務状況、従業員の地位や職責を考慮し、次のような基準に照らし使用者、従業員の双方から直接事情等を聞いて認定するかどうかを判断しています。

① 原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合。また、一般的に見て「極めて軽微」な事案であっても、使用者があらかじめ不祥事件の防止について諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、しかもなお労働者が継続的に又は断続的に盗取、横領、傷害等の刑法犯又はこれに類する行為を行った場合、あるいは事業場外で行われた盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為であっても、それが著しく当該事業場の名誉もしくは信用を失ついするもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は労使間の信頼関係を喪失せしめるものと認められる場合。

② 賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合。また、これらの行為が事業場外で行われた場合であっても、それが著しく当該事業場の名誉もしくは信用を失ついするもの、取引関係に悪影響を与えるもの又は労使間の信頼関係を喪失せしめるものと認められる場合。

③ 雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合及び雇入れの際、使用者の行う調査に対し、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合。

④ 他の事業場へ転職した場合。

⑤ 原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。

⑥ 出勤不良又は出欠常ならず、数回に亘って注意を受けても改めない場合。

※実際に認定されるのは、労働基準監督署長が認定基準に照らして「労働者の責に帰すべき事由」があると判断した場合です。

たとえ、就業規則で懲戒解雇事由となっていても、上記①~⑥の基準に該当しない場合は30日以上前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要になるので、注意が必要です。

懲戒処分を行うときの手続としては、懲罰委員会(会社および労働者代表で組織)を設置し、本人の弁明の機会を与え、懲罰委員会の意見を聞いて会社で懲戒処分を決定します。本来、懲戒処分は会社が一方的に行うものですが、懲罰委員会を設置し「処分の公平性」を明らかにすることにより、解雇予告除外認定を受けるときや裁判になったときに会社側にとって有利な判断材料になります。

また、懲戒処分を行う場合には、本人と連絡が取れなくなる場合もあります。このような場合、懲戒処分は処分が本人に到達しないと効力が発生しないのが原則なので、就業規則の中に「本人が出社せず、本人に通知できないときは、会社に届け出ている住所に送達することによって、通知したものとみなす。」などの規定を設け、郵便でも通知することができるようにしておくことが必要です。

労働基準法を守らなかったときの会社への罰則

最高1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金。

労働基準法は労働者を保護するための強行法規で、労働基準法違反の雇用契約は会社と従業員の間で合意があっても労働基準法に違反している部分は無効で労働基準法の内容が強制的に適用されます。

労働基準法第2条で、労働条件の決定は会社と社員が平等な立場で決定すべきと定められていますが、実際はなかなかそのようにはうまくいかない事が多いもの。

そこで、労働基準法違反を行った場合には会社に対しての罰則が定められています。この罰則規定は両罰規定のため、たとえ、事業主が労働基準法違反を行っていなくとも、会社の役職者などが労働基準違反の行為を行えば、事業主にも責任を負わすというものです。「知らなかった」では責任を逃れることはできません。

そのため、事業主を含め会社の労務管理に携わる者にとっては労働基準法の知識は必要不可欠な知識ということができます。ここではどのようなことをしたらどのような罰則があるのかを記載しておきます。また、ここでの記載は労働基準法の罰則だけですが、労務管理上必要となる他の法律にも罰則規定がありますので、注意を行う必要があります。

1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金

・使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。(労働基準法第5条)

1年以下の懲役または50万円以下の罰金

・ 何人も、法律に基づいて許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。(労働基準法第6条)

・使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。ただし、特例として行政官庁の許可を受けたものは除く。(労働基準法第56条)

・使用者は、満18歳に満たない者を坑内で労働させてはならない。(労働基準法第63条)

・使用者は、満18歳以上の女性を坑内で労働させてはならない。(労働基準法第64条の2)

・職業訓練を受ける満16歳未満の労働者を坑内で労働させてはならない。(労働基準法第70条参照)

6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

・使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。(労働基準法第3条)

・使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱をしてはならない。(労働基準法第4条)

・使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。(労働基準法第7条)

・使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。(労働基準法第16条)

・使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。(労働基準法第17条)

・使用者は、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。(労働基準法第18条第1項)

・使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間、並びに産前産後の女性が休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。(労働基準法第19条)

・使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前に解雇予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。(労働基準法第20条)

・使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は退職証明書に秘密の記号を記入してはならない。(労働基準法第22条第4項)

・使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない。使用者は、1週間の各日については、労働者に休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはならない。(労働基準法第32条)

・使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。休憩時間は、一斉に与えなければならない。(労働基準法第34条)

・使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。(労働基準法第35条)

・坑内労働その他厚生労働省で定める健康上特に有害な労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない(労働基準法第36条第1項ただし書)

・使用者が、労働時間を延長し、または休日に労働させた場合においては、その時間またはその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率(延長した労働時間の労働については2割5分、休日の労働については3割5分)以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。使用者が、午後10時から午前5時(地域・期間により午後11時から午前6時)までの間において労働させた場合は、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(労働基準法第37条)

・使用者は、その雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続しまたは分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。(労働基準法第39条)

・使用者は、満18歳に満たない者を午後10時から午前5時(地域・期間を限って、午後11時から午前6時)までの間において使用してはならない。ただし、交代制によって使用する満16歳以上の男性については、この限りでない。(労働基準法第61条)

・使用者は満18歳に満たない者を、危険な業務または厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。使用者は満18歳に満たない者を、有害な原料等を取り扱う業務、その他安全、衛生または福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。(労働基準法第62条)

・使用者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性を重量物を取り扱う業務、有害ガスを取り扱う業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。(労働基準法第64条の3)

・使用者は、6週間(多胎妊娠の場合14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えない。(労働基準法第65条)

・使用者は、妊産婦が請求した場合においては1ヶ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制及び1週間単位の非定型的変形労働時間制の規定にかかわらず、1週間または1日について法定労働時間を超えて労働させてはならない。(労働基準法第66条)

・生後満1年に達しない生児を育てる女性は通常の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。(労働基準法第67条)

・未成年者の認定職業訓練を受ける者には、12労働日の年次有給休暇をあたえなければならない。(労働基準法第72条)

・労働者が業務上負傷し、または疾病にかかった場合には、使用者は療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償を行わなければならず、葬祭を行うもに対しては葬祭料を支払わなければならない。(労働基準法第75条、第76条、第77条、第79条、第80条)

・使用者は、事業の付属寄宿舎の寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない。また、付属寄宿舎生活における必要な措置を講じなければならない。(労働基準法第94条第2項、第96条)

・事業場に、労働基準法または労働基準法に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁または労働基準監督官に申告することができる。使用者は、労働者が申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。(労働基準法第104条第2項)

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